カテゴリー「01.レコーディングの仕事の事」の記事

recording INDEX 

2016/12 当ブログを移転いたしました。
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引き続きよろしくお願いいたします。



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■レコーディングエンジニアの今昔

■アメリカのレコーディングエンジニア

■レコーディングエンジニアの存在意味とは?

■専門学校に行く必要性について

■私のエンジニア経験について 前半

■私のエンジニア経験について 後半

■ディレクション能力の必要性について(その1)

■大規模レコーディングスタジオは必要か?NEW

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大規模レコーディングスタジオは必要か?

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はじめに
近年、大規模レコーディングスタジオの閉鎖が相次いでいる。
日本も例外なくスタジオ大量閉鎖時代とも呼べる状況だ。

その多くは老舗スタジオと呼ばれるレコーディングスタジオであり、日本の音楽業界の中枢で役割を担ってきた事は言うまでもない。

スタジオ閉鎖の理由は様々だと思うが、一番の理由は需要の低下。
ProToolsを筆頭にDAWの高性能化が進み、一昔前では考えられない事がスタジオではなく自宅で出来てしまう。
私ももちろんDAWの恩恵を受けているが、やはり長年親しんだり多くの作品を録音してきたスタジオが閉鎖されるのは悲しいと思う。

DAWの他に音楽業界含む、TVラジオなどのメディア業界、マスコミ業界などの業績低迷が大きく影響している。
制作費はどんどん削られる状況で高いスタジオ代がかかるスタジオは敬遠される。
この状況はおそらく止まらずに業界の崩壊に近いところまでいくかも知れない。
まず良くなることはありえない。

大規模レコーディングスタジオの魅力は何か?
この機会に閉鎖されていく老舗スタジオの魅力を考えてみたい。
まず、大きいスタジオは大体歴史のある老舗の場合が多い。
大きいところでしか録音出来ないセッションというものは存在する。
オーケストラを使った映画音楽をはじめバンドものでもDr+Bass+Piano+Gtrという編成でブースを分けて完全セパレートで録音しようと思えばそれなりの規模は必要になる。
ただし近年は無理に同録をしなくてもいいじゃないかという考えが一般的であり、何が何でも同録でないと駄目なセッションはレアケースだろう。
では、老舗スタジオの魅力とは何か?
広いメンフロアーやアナログMTR、ビンテージ機材でもなく、モニター環境であると思う。
新しく出来るスタジオでモニターが物凄い良い例というのは稀だと言える。
もちろん全てのスタジオを知っているわけではないが、老舗スタジオのモニターは安心出来る事が多い。
スタジオのエンジニア陣やメンテナンスエンジニアが長年かけて改良し、調整を行ってきたモニターというものはやはり重要だと思う。
不思議なもので楽器のように年月をかけて熟成してきたスタジオの音というものがある。

音は目に見えず、再生媒体によって変わるいわば正解のない世界だ。
モニター環境が良いという事は録音される段階から音の隅々まで確認しながら進められるという事。
これはやはり代替えが利かない一番の魅力であると思う。

結局 大規模スタジオの必要性は?
結局のところビジネス的な都合で言えばどうしても必要なときだけ大きなスタジオがあれば良いという事になる。
モニター環境の問題だってミックスダウン後に失敗した箇所に気が付いても、セッションを立ち上げて再度修正する事が出来る。一昔前は不可能だった事が可能だ。
大きなスタジオが必要なときには日本にはNHKスタジオもあるし、その気になれば録音車やモバイルシステムでホールでも何処でも録音は出来る。
それが終わればさっさと片付けてボーカルしか録音出来ない小さなスタジオへと場所を移すのだ。
予算管理という考えでいくとごく当たり前な事が出来る環境になり、そういう選択筋を選ぶのはごく当たり前であると言える。
老舗スタジオの閉鎖は時代の移り変わりの中もはや必然であると言えるかもしれない。


最後に
手持ちのお気に入りのCDのクレジットに書かれているスタジオを見てみて下さい。
もう無いスタジオもあると思います。
スタジオは無くなってもそこで録音された音楽は時間を越えて残ります。
それが音楽の一番素晴らしい事だと思います。

もういちど 音楽とは何か?を考えなおす時期が来ているのでないでしょうか?

ディレクション能力の必要性について(その1)

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ディレクションとは普通はディレクターが行う仕事です。
しかし近年はディレクターがA&Rとなり、ディレクションの仕事はプロデューサーが行う事が多いように思えます。
さらにレコーディングエンジニアにもディレクション能力が必要な現場も多いのが実情です。

では、ディレクションとは何の事でしょうか?
辞書によると

ディレクション【direction】
指導。管理。監督。演出。指揮。「本の―を手がける」
2 方角。方向。

3 傾向。また、目的。

つまりディレクターは作品監督です。
レコーディング現場のディレクションは様々なものがありますが
主に 演奏、音色、歌唱を取り仕切るのがディレクションになります。

しかし最近のディレクターといえばディレクションをしている事は少なくて完全にA&Rになっている事が多い傾向にあります。
つまりディレクションをする人間がいないレコーディング現場が多いのです。
そういった場合はレコーディングエンジニアがディレクションを求められる雰囲気になったりするのですが・・・問題は色々あります。

〈レコーディングエンジニアがするディレクションの問題点〉
・その1
音質や音色に意識が大きく偏る事がある。

マイクのチョイスや楽器の音は重要ですがそればっかり気にしている人がいるのも事実です。実際マイク決めだけで歌手が歌えなくなるほど喉を消耗してしまったなんて事があります。

・その2
個人の趣味に走る

人により音楽の趣味は様々です。もちろんエンジニアだって趣味指向があります。
ことディレクションまで任された途端に自分の趣味を押し付ける場合があります。
これはセンスの問題もあるので言われた事を忠実に出来る人でもこういった事になる可能性があるので注意が必要です。

・その3
編集で全部なんとかしようとする

近年のDAWは優秀です。生のドラムもクオンタイズ出来てしまいますし、歌の音程だって修正出来ます。
それを一番知っているのはエンジニアなのですが、自分が作業するからという前提で
満足な演奏もさせずに編集に頼ろうとする事があります。
そのほうが早いという気持ちは理解できますが、良くない思考です。

〈まとめ〉
ディレクションは経験が必要です。
色々なスタイルや方法論があります。時間や予算の事まで考慮して進める必要があります。
時には予定していた作業をやめるなんていう決断もしないといけないのです。
優秀なエンジニアでもディレクションが出来ない(やらない)人は沢山いますし、逆に軽々しくディレクターを気取っているだけのエンジニアもいるかもしれません。
ディレクションとは何か?何を重要視してどんな采配をしていくか?
ディレクターは難しいのです。

私がアシスタントをしている時ある方にこんな事を言われました。
「○○君はプロデューサーになりたいんでしょ?」
そのときはピンと来ませんでしたが、今考えると私は"レコーディングエンジニア"ではなく"プロデューサー"になりたかったんだとハッキリわかります。
ディレクションをするエンジニアはプロデューサーです。
作品全体を見て作業を進めていく技量が必要です。
もっと大事なのが"責任"です。
ディレクションをするという事は責任を負うという事を忘れないで下さい。
 

私のエンジニア経験について 後半

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その後、日雇い派遣のアルバイトをしながら小さなスタジオエンジニアとして生活をしていた20代後半。
本来ならば「最悪」の時期のはずなのですが
今思うとこの時期は大変重要だったなあ と思います。

それまでは大きなスタジオでSSLやNEVEのコンソールがあり、
マイクはビンテージノイマンが使い放題。
機材は一流、ミュージシャンも一流。

環境は天と地ほど変わり・・

小さなスタジオにProToolsHDとO2Rがあるだけ。
非常に限られた機材で、素人ミュージシャンの録音という状況です。
しかしここで重要になったのは
「どんな状況・環境でもベストパフォーマンスを出す」

という事です。
まさに第二期の修行でした。

例えるならランナーが空気の薄い高地でトレーニングを行う様な状況です。
限られた環境で仕事をこなす事で様々なアプローチで、より高いスキルを身に付けられたと感謝しています。
この時期自分の音が良くなるのを実感しました。(自慢ではないです。実際変わりました)音が良くないのを機材のせいにするエンジニアの話を聞きますが
光芒筆を選ばず ではないですが、ある程度の機材があれば最低限のクオリティーに持っていくことは当たり前と考えます。

■現在
色々悩んだ末、制作会社を立ち上げ今に至っています。
仕事を請ける→仕事を作る という考えに変わったのが大きかったと思います。
会社として音楽制作など全般を請け負うにはレコーディングエンジニアという経験が非常に有効に働いていると感じています。

■最後に・・

エンジニアとして腕を磨く事は当たり前です。
しかしそれだけでは雇われエンジニアの域を脱しません。

仕事を請ける側にいる限り仕事が来るのを待つしかない
という事。
これは非常に重要です。
私はレコーディングエンジニアに固着していた事に気が付きました。
そしてレコーディングだけをやりたくてこの仕事を選んだのではないとも感じました。

その結果
「エンジニアを軸にしてやれる事は全部自分でやろう」と思えたのです。

ディレクションやA&R、スタジオやミュージシャンのブッキング、新人発掘、予算管理、弁当の手配など色々な業務を極力自分でやるようにしました。

結果、株式会社を立ち上げ現在に至るわけですが
エンジニアのみに固着している人は今でも沢山いると思います。
そして多くの場合、時代に取り残されつつあります。

もっと広い視野で物事を捉えていく柔軟さがこれからは必要だと思います。

仕事は来るのではなく自分でつくる位の姿勢が必要だと思います。
現在は制作会社を運営しながら次の目標に向けて動いているという感じです。

・・
まじめな話になってしまいましたが、ドラクエ3ってやった事ありますか?
あの転職システムっていうのはものすごく世の中の仕組みをあらわしているなぁ と感心するのです。
転職できるレベルになったらポイポイ転職していては中途半端な能力のキャラになってしまいます。
しかし戦士を極めた後に魔法使いになると戦える魔法使いに育つのです。

まずは一つの道をある程度究め、技術を習得する事は非常に大切だと思い知らされました。
幸い私はレコーディング技術を持っていましたので他の仕事をするにも軸をもって取り組む事が出来ます。

まずは一番の武器になるスキルを徹底的に磨く事が重要だと思います。

これから音楽業界に入ろうとしている人達も"人に負けない何か" を身に着けてほしいと思います。

私のエンジニア経験について 前半

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ちょっと私が現在に至る経緯をお話しようと思います。

私がアシスタントエンジニア時代を過ごしたのは超メジャースタジオ、
スタジオ業界では誰もが知っている老舗スタジオでした。

今思い返せば貴重な経験も沢山したなぁと思います。
ビッグバンド一発録り、大編成演歌、外国のエンジニアとの仕事、映画音楽、ミリオンヒットになった制作現場。

挙げていけばキリがないくらい当時の音楽業界の真ん中にいました。

■糸が切れた瞬間

25歳から27歳の時に色々ありまして、結局27歳でスタジオを辞める事になりました。
当時はProToolsが普及し始めた時期で、次第にスタジオでも編集作業が占める割合が多くなってきました。

私の糸が切れた瞬間 というか、本来やりたかった事と現状の 差 に気が付いたのはそんな編集作業のときでした。

深夜の作業中、トイレから戻ってきた私の目に映った光景は異様なものでした。

ディレクター、エンジニア、プロデューサー、スタジオにいる全員がパソコンの画面に集中しているのです。

当たり前といえば当たり前ですが  

真剣に思ってしまったんです。

「こいつら 何をやってるんだろ・・・」


クリックの波形に合わせてドラムのタイミングを修正していく作業に何の意味があるのか・・・
私にはわからなくなってしまったのです。

音楽をつくる仕事をしたくてこの業界に入って来たはずが実際スタジオで行われているのは下手な演奏を何とか聴ける状態にする 波形編集作業。

この時から異常なストレスを感じるようになりました。


「自分は何をやってるんだ?」

「有名な人の仕事をする事が大事な事か?」

「自分がしたかった仕事はこんな事だったのか?」

常に自問自答をしていたと思います。

■決断
結局私はスタジオを辞める事を選択しました。

当時はそれほど仕事を抱えているわけでもなく、ただ辞めるというだけでしたので、フリーとは名ばかりの無職です。
とにかく今の環境を辞めて現状を変えたかったのだと思います。

■低迷期
スタジオを辞めた私はエンジニアの仕事は一切せずに、無職の時期を過ごします。

失業保険を受け取り、毎日昼に起きて酒を飲み、朝5時までグダグダ過ごし また昼に起きる。

そんな生活を半年ほど送りました。

顔色は青白く、目の下は大きな湿疹が出来て麻薬中毒患者のような顔になっていました。

貯金を食いつぶした結果、何でもいいから仕事をしなくては生活できない状態までいきました。

しかし当時はエンジニアの仕事もあまりなく、たまに来る仕事もProToolsを手足のように使えないと話しにならないものばかり。

結局、選んだバイトは 「ガードマン」 工事現場で赤い棒を振る仕事です。

日雇いでエンジニアの仕事が急に入っても対応が出来たので選んだのですが
現実は予想以上に酷く、通行止の案内をするとトラックドライバーに空き缶を投げつけられ、馬鹿ヤロー!と罵声を浴びる事もありました。

とにかく嫌な顔をされる仕事が多く、人に感謝されない仕事はきつかったです。
結局1年間この仕事を続けました。

しかしこのガードマンをやってみてわかった事が沢山あります。

1、社会のピラミッド構造は各業界に存在する
2、人は自分より立場の弱い人間に偉そうな態度を取る
3、自分の知っている社会は世の中のほんの一部にすぎなかった
4、人に感謝される、必要とされる仕事をしたい

今思えば底辺とも言えるガードマン時代は貴重な経験だったと思います。

社会全体が何となく見えてきたのです。

幸いだったのは「音楽を仕事にしたい」という気持ちが私の中で消えずにいた事でした。

この頃から私の仕事に対して少し考えが変わってきたのです。

後半へ続く・・。

音楽系専門学校に行く必要性について

●今まで出一番多くある質問
「レコーディングエンジニアになる為には専門学校に行ったほうがいいですか?」

答えは 「行かないよりも行ったほうが良い」 ですが、
その後にこう付け加えます。

「専門学校に行ってスタジオに入れる確率を見れば・・その時間とお金をかけるだけの価値があるか・・を自分で判断してください」

どうでしょうか?

例えばクラシックピアノを習いたいと思った場合に大きく分けて2つの選択筋があります。
1、プロのピアニストになりたい。
2、趣味でピアノが弾きたい。

同じピアノでもこの2つでは大きく異なります。

趣味でピアノを弾きたいのならば何歳からでもピアノ教室に通う意味はあります。

しかしプロのピアニストになりたい場合は高校卒業後でピアノ教室に通ってもプロになるのは現実的に厳しいと考えられます。

●ではレコーディングエンジニア志望の場合はどうでしょうか?
多くの場合高校卒業後、進路を考えたときに音楽系に進みたいと思うのが一般的ですが
ほぼ全員可能性は同じです。

楽器のように幼少期から学ぶなんて人はまずいないと思われます。

レコーディングエンジニアになる為には 専門学校に行く 又は 専門コースのある音楽大学に行く という選択筋があります。

しかしよく考えて下さい。

レコーディングエンジニアは医者や弁護士のように国家資格があるわけではなく
ミュージシャンと同じような不安定な職業です。

しかもまともな経験を積むにはそれなりの規模(知名度)があるレコーディングスタジオに入る必要がありますが、世間で言う就職ではありません。

もちろん求人情報誌になんて掲載されない職種です。

という事は北海道から沖縄、ボストンまで数あるレコーディングエンジニア課がある学校に行ってもレコーディングスタジオに入れる保障は全くありません。

資格のように頑張れば取得できるというようなモノでもありません。

●結論
首都圏以外に住んでいるエンジニア志望の人はまず、東京に出て来ないと話にならないのは事実です。
東京にしか大きな規模のレコーディングスタジオが無いからです。
その口実として専門学校に行くのは親を説得するのにはいい材料かもしれません。

現実は専門学校に大きな意味は無いのが現状です。

機械やケーブルの巻き方などはリハーサルスタジオのバイトでも出来ますし、2年間で200万円近くの学費を考えれば非常にリスクの高い投資だと思えます。

まして地方の専門学校にいたっては・・・言うまでもないですね。
音楽業界は東京にしかありません(大阪にも少し・・ありますが)
学校卒業後に東京に出て行くのは・・厳しいですよ。

ちなみにここで私の経験を書きますが
私も例に漏れずに東京に出てくる為に専門学校に行きました(本当は音大に落ちたのですが)
誰もが知っているマンモス学校です。
2年生の春にSO●Y信濃町スタジオの試験を受けまして、見事合格。
この時点で2000人の4人です。
はっきり言うと試験と言っても一般教養や面接です。
(このSO●Y試験は自分の中の伝説となっているので今度詳しく紹介します。)
SO●Yでの研修生として勤務した後、某大手スタジオに移籍。
SO●Yは研修生止まりで不採用となったわけですが、最終的に本採用は1人でした。
その彼も2年後、レコーディングからマスタリングに異動となっています。

私の通っていた専門学校は1学年で150人ほどいましたがスタジオに入ったのが4名
私は学校外の就職活動でスタジオに入ったので実質3人です。
その他は良いケースでNHK音声部、ライブハウスPAです。
ほとんどは田舎に帰るかフリーターとなります。

何せ音楽系専門学校なんて資格も何もないですから・・。

最初に書いたように
レコーディングエンジニアになりたかったら
「専門学校に行かないよりも行ったほうが良い」

という事になりますが。

専門学校に行ったところで何にもならない場合が多い
という事になると・・いう暗いお話でした。









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レコーディングエンジニアの存在意味とは?

他でも触れましたがレコーディングエンジニアを取り巻く状況は日々変化しています。
かつて栄えた恐竜の様に、バブル時代のOLの様に・・・
時代・環境に対応できない種は絶滅する状況におかれていると言っても過言ではありません。

では今でもレコーディングエンジニアとは何故必要なのでしょうか?

エンジニアという言葉の意味である「技術者」
wiki/エンジニア参考
ハードウェア、ソフトウェアにおいて、その原理、仕組みを理解し、深く精通している事を指すと思いますが、実際巷に多く存在する「レコーディングエンジニア」にはこれが当てはまるでしょうか?

答えは否です。

コンピューター内で完結できるシステムの普及で過電圧による歪や機材の故障、テープレコーダー特性を使った音色変化、適正レベルでの録音など技術者としての要素は薄くなりました。
録音の基本の基本であるマイキングでも2本以上のマイクを立てると生じる位相のズレなども「後で波形合わせよう」で済んでしまいます。

■現在のレコーディングエンジニアに求める事
これは何十年も前から、不動の理由があります。
音が良い事
音が良いとはオーディオマニア的に音が良いではありません。
究極に言ってしまえば
「アーティスト・プロデューサーの望む音に仕上げる事」
これにつきると思います。
「自分はロックが専門だから」「今は歪んでるほうがかっこいいよね」等
レコーディングエンジニア(自称)の言う言い訳やたわごとは沢山あります。

アーティストが求める音がカセットテープの音だったり、あるいはレッド・ツェッペリンだったりします。
音が良いとう法則や正解は存在しません。
しかし音が良くないというものは確実に存在します。
「アーティストが求めていない音」です。

つまり作品に合っていない音つくりや個人の趣味が強く出ている音が多いですが

多くの場合「予算がなくて安いスタジオしか使えない」といった条件面で妥協や自分を納得させている人がほとんどだと思いますが
これはただの言い訳だと思います。

さすがにヤマハのピアノをスタインウェイの音には出来ないですが、ヤマハのピアノでもキチっと録音すれば綺麗な音ですし、少なくとも作品の価値を低下させるような事はありません。
しかしレコーディングエンジニアの手によって作品の価値が低下させる事はよくあります。
よく耳にします。
「あーこれ失敗してるな・・かわいそうに」
TVなどを観ていてこうつぶやく事は沢山あります。

私は一緒に仕事をした人たちから

「予想していたよりも完成度が高くなった」

「低予算で心配でしたが仕上がりに満足です」

「自分たちにないテイストが加わって良かった」

など言っていただけなかった場合は失敗だと思うようにしています。

「まあ、こんなものか」「予算にしてはまあまあじゃない」

そういったご意見はお叱りの言葉と受け止めています。

一緒に仕事(レコーディング・ミキシング)をする事でより作品の価値・完成度を上げる事。

それが出来ない人はレコーディングエンジニアではなく

「DAWを使える人」だと思っています。

あなたの作品のレコーディングエンジニアはその作品の価値を高めてくれていますか?

アメリカのレコーディングエンジニア 

【アメリカのレコーディングエンジニアについて】

レコーディングエンジニアって日本とアメリカでどう違うのか?
ケースバイケースですが、大きく違うのはプロデューサーがエンジニアをやる事が非常に多い。という事です。

もちろんスタジオにはハウスエンジニアもいますし録音の仕事というのも確立しています。

これはプロデューサーという立場が日本と違う事が原因です。

日本のプロデューサーはアレンジャーに毛が生えた状態の場合が多く、アメリカのソレとは全く別物です。
もちろん仕事の質も内容も違いますが、答えは簡単です。

プロデューサーが全てを仕切ります。
企画、プリプロ、予算から最後の音決めまで。
何故プロデューサーがエンジニアをやるのかは明白です。
料理に例えて考えると
チーフシェフが理想のソースを開発するのに自分で調味料の選定や量、煮込む時間などを決めていくのが当たり前でしょう。
これを部下と2人でやると
「塩は沖縄産のがいいから手配して」
「スープに使う野菜の切り方は10センチ角に・・」
「火加減はもう少し弱く、気温を見ながらこまめに調節して・・・」
など、自分の感覚を人にいったん伝えて、それを忠実に行えるかチェックする必要があるのです。
レコーディングに置き換えると、楽器のチョイス、マイクのチョイス、HAからEQ等、こういった一連の行動を自分でやるほうが簡単で理想に近づくと思いませんか?

中には楽器演奏まで自分でこなすプロデューサーもいます。

エンジニアの中にもミックスダウンしかやらない人など様々ですが
プロとして自分が一番能力を発揮できる方法をとっています。

あの人に頼めばこんな感じに仕上がるというイメージが出来ているのです。

よくも悪くも いつものテイストをキッチリとこなせるのです。

日本のエンジニアにありがちなプロデューサの操り人形のような仕事はなんとも言いがたい作業ですね。
「EQはフォーカスライトの4バンドを入れて・・コンプは1176で・・」
等と完全指定で来る時なんかは
「自分でやっていいですよ」
とマウスを渡すときもありますが、結構ムッとされますよね。
いやいや・・絶対自分でやったほうが早いって・・。ね。
エンジニアのみなさん
今度言ってみましょう。
「自分でやった方が早いですよ」

あ・・でも 仕事一個なくなっちゃいますね。

大まかにレコーディングエンジニアなる物が何かわかったところで
次回からテクニックやアプローチの仕方など書いていきます。

レコーディングエンジニアの今昔

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まずはじめに、レコーディングエンジニアとは何か?

レコーディングエンジニアを取り巻く環境の変化などを説明します。

この職業は時代とともに若干立場が変わっていきました。

日本の場合
【昔・1960年代~1970年代】
一般的にミキサーと呼ばれていました。
レコード会社の社員である事がほとんどで、サラリーマンです。
スタジオもレコード会社専門のものしか無く、音楽制作は社内で完結していました。
マルチトラック録音などが普及するのは後期で一般的には2トラック同時録音が主流。
スタジオのマイクをミックスして直接テープに完成品を作る という今では考えられない
緊張感のあるかっこいい仕事だったのです。
必然的に機械の修理メンテナンスも行うことがおおく、技術や電気の知識が必要とされていました。
エンジニアという名前はこの時代の名残です。

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【ちょっと昔・1980年代~1990年代】
時代はレコードからCDへ移行し、若者にはウォークマンが大流行。
憧れのミニコンポでお気に入りのバンドのCDを聞くのがお洒落な時代です。
この頃から録音現場でも個性的な音を求めるアーティスト、バンドが増えてきます。
機材も恐竜のようにありとあらゆるジャンルや個性を追求したものが沢山開発されます。
デジタルリバーブの名機Lexicon480やYAMAHA REV7、BBEのエキサイター等が有名です。
ここで録音機に革命的なマシーンが登場します。

SONY PCM-3348!
黒々としたデカイ箱には細いテープが一本、なんと48トラック録音可能。
タイムコードトラックとアナログトラック、サンプリング機能も別に付属すうという革命的なレコーダーでした。

「デジタルって音が良いから古い機械はもういらない。時代はデジタル」という理由で日本のスタジオからアナログレコーダーが消えていきます・・。

まさにバブル絶頂期の日本の様にイケイケ状態が続きました。
楽器の世界にも電気化の流れが加速。

リズムマシーンやMIDIシーケンサーの発達に伴いドラム・ベースがいないバンドなどが登場します。今ホットなTMネットワークとかです。

録音の現場も機材の多様化、作業量の増加に伴い労働時間が増加・・。リリースはハイペース。何日も寝ずにスタジオに泊まるなんて当たり前の時代です。
今でも「もうマル2日も寝てないよ~」なんて挨拶代わりに言う原始人もわずかですが生き残っています。

このデジタル崇拝はレニークラビッツが世に出るまで続いていきます。
レコーディングエンジニアの売れっ子はフリーとなり1日9万円といいうギャラをもらう花形商業へと変貌しました。
この頃はアシスタントなる生物がスタジオ業務の大半を担っていて、セッティング、お茶の用意、掃除、バラし、エンジニアの機材運搬などありとあらゆる事を一人で行います。

エンジニア様の中にはマイクがあるのを確認してつまみを右に回すだけ。
歌の録音が始まると「後はよろしく」と休憩室に行ってしまうなんていう種類もいらっしゃいました。

有名なアーティストの仕事を請ければ一生安泰。

そんな幻想まで本気で信じる事があたりまえの時代です。

この頃、人数増加とともにクオリティーの低下が著しくみられ、ドラムを録音した事がないエンジニアも登場!
ミックスは任せろ とばかりに機械をいじりまわし完成するのは次の日の昼過ぎ。

遠くで音が鳴っているみたい・・という最悪な仕上がり。そんな腕でも仕事は沢山ある俺様エンジニアも多く登場しはじめました。

そう、これは音楽業界バブルが終わりを迎えるまで続きます。

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【今・2000年~現在】
音楽バブルは終わりを向かえ、ミリオンヒットは影を潜めます。

同時にスタジオ大量閉鎖、エンジニアの低ギャラ化が進みます。
世に言うインディーズ全盛期も相まって、音楽はお金をかけなくても出来る!

そうです。 ProToolsの登場です!


アナログからデジタルへと進化したテープレコーダーは完全にMACという小さな箱に入ったハードディスクに役目を奪われます。
今でも「マワシマース!」とアシスタントが言いますがハードディスクは既に回っています。

一部のアナログ好き・機材好き・ビートルズ好きの人たちが予算がある仕事だけ限定で今だにアナログテープレコーダーを使用しますがほとんどがProTools,Nuedo等のコンピューターベースのレコーダーで作業を行っています。

加えてスタジオも小規模である程度の録音が出来るところが多数オープン。

スタジオ料金も一気に3分の1~5分の1に低価格化。

エンジニアのマニピュレーター化、ミュージシャンのエンジニア化が進み、誰でもスタジオのような環境を手に入れる事が出来るようになりました。

ギタリストやキーボーディストがレコーディングエンジニアをかねる事もよく見られます。

これにより本職のエンジニア陣は仕事の減少により、さらなる低ギャラ化、何でも屋化が進みました。

作家やプロダクションと組まないと仕事が無いなんていう状況です。

特別な知識無しでパソコンの前に座れば録音が出来る。

これを『誰でもエンジニア化』と呼ぶ事にします。

この『誰でもエンジニア化』による公害も多数発生。

自称エンジニアやエンジニアという名の素人が大量に出没。

クオリティーのバラつき、低下が蔓延して仕上がりが素人テイスト満点のCDが数多く世に出ることになりました。

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【未来予想・2010年以降】

『誰でもエンジニア化』により近い未来、レコーディングエンジニアなる職業は絶滅の危機に瀕するでしょう。

録音環境の変化、制作費の変化、アーティストの変化によりミックスだけ出来る人はもう要らなくなります。

録り音が素晴らしく良い とか アレンジも出来る とか何か付加価値がないと生き残れません。

今までのように卓の前に座ってタバコをふかしてお金がもらえた時代はもう終わっています。

レコード会社のプロデューサーに尻尾を振っても仕事は来ないのです。

次回は音楽大国アメリカのエンジニアとは?何か?をお送りします。


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