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今だから言える失敗暴露話

2016/12 当ブログを移転いたしました。
新しいブログはhttp://www.recording69.com/になります。

引き続きよろしくお願いいたします。



今だから言える失敗暴露話

もう時効となった私がしでかした大事故の事を書こうと思います。

ある大物歌手のレコーディングでその事故は起きました。
当時私はアシスタントエンジニアとしてスタジオに勤務していました。

その日は締切りが近い事もありスタジオをパラって作業する事になりました。
(パラとは2つスタジオを使用して、片方はミックス、片方では録音を同時に行う事を言います)

ミックスする曲と歌を録音する曲が同じリールに入っていた為、マルチテープを切って別リールに巻く作業が必要になりました。

こういった作業は結構やる事が多く、作業自体に何の不安も問題も無かったのですが・・・そこで悪夢の事故が起こります。

テープを3348にセットして分けるように少し捨てテープを巻き、続けてミックス用の曲を巻いていきます。
もちろん手ではなくMTRの早送りを使います。
FFボタンを押した次の瞬間、スタジオからディレクターに小さな用事で呼ばれました。
しばらくして3348の置いてるマシンルームから「ガチャン!」と大きな音が聞こえました。

私は何が起きたのか瞬時に理解しました。

経験者はもうお分かりと思います。
そこにはテープが機械に絡み、途中でちぎれている という惨状が目の前にありました。
巻き取る側のリールからはみ出したテープが駆動部分に絡み切れていたのです。

驚くほど私は冷静でした。

隣ではミックスダウンの準備、こっちのスタジオはこれから歌入れが始まろうとしているのに・・です。

メータに表示されている止まったカウントとテープの曲のカウントを見ました。
偶然ですが曲と曲の間でカウントは止まっています。

運が良ければ切れている所、ぐちゃぐちゃになっている所は曲が入っていない無音部分かもしれません。

というかそれしか私がこの状況から助かる術はありません。


慎重に綺麗な状態のテープを戻し、新しいリールにゆっくり巻きとりました。

問題のぐちゃぐちゃの方を確認します。

何とか綺麗になった場所で再生確認を試みます。

・・・・エラー表示が点いたまま音が出ない・・・・。

もう終わりかと思いましたが、切れる時にテープヘッドに相当な負荷がかかったはずなのでヘッドクリーナーでこびりついたテープ粕を掃除します。


祈るような気持ちで再度再生を試みます。

・・・・・・音が出た!

しかしまだ安心は出来ません。
曲の最後まで残っているか・・・・曲終わりまで再生した後10秒ほどでぐちゃぐちゃエリアに突入しテープは切れていました。

結果的には事故とは言え大事にはならずにすみました。

クライアントへも黙っていましたし、スタジオ営業部にもこの事は話しませんでした。
無事だったとはいえ本当に申し訳ない事をしたと思います。

偶然が重なってテープがだめになった場所が曲間だったというだけで本当は大事故に繋がる最悪のミスです。
アルバム発売も延期されていたかもしれません。

今思い出しても恐ろしいです。

後にも先にも私のエンジニア人生で足が震えたのはこの事故だけです。

関係者の皆様 本当に申し訳ございませんでした。

おわり

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06.レコーディング現場実話」カテゴリの記事

コメント

怖っ・・・(@Д@;
めちゃめちゃ幸運でしたね!!

え!デジタルマルチを切ったんですか?

もう一台3348持って来てランニングテープかニューテープにデジコピしなかったんですか?

信濃町スタジオさん大胆ですね。

私も90年代アシやってましたが、
デジタルマルチ切ったことは一度もありません。

アナログテープならまだしも、
デジタルテープって強度が不明瞭なので、
切り貼りするのは怖いです。


というか、事故起こったら、
どうやって責任とるんですか?

ソニーグループ内だから、
なんとかなるんでしょうか?

まず 信濃町スタジオの話ではないので、SONYでもありません。

その当時のスタジオではデジタルマルチのリール切り分けとか普通にやってましたよ。
もちろんテンションを考慮して捨てテープの後に付けます。

メーカーの編集キットもあるくらいですからね。

まるごとのデジコピはよくありましたが
今回の話では別々の曲のTDと歌入れだったので 歌入れをデジコピにすればマスターに戻す歌がコピーになってしまいます。
TDをコピーでやるわけにもいかない。

テープのリール分けはクライアント指示でもありますし、またコピーを作るとなると数万円のテープ代もかかるわけでスタジオが勝手にやっているわけじゃないでしょう。

当時は何も感じませんでしたが
「切り貼りするのは怖いです。」とおっしゃってるくらいなのでリスクはありますよね。

今はスタジオもスタッフもクライアントから信頼されていたんだな
と思いました。

そうでしたか。

クライアントの指示であれば責任はクライアント側になりますね。

でも、クライアントは技術的な面では専門ではないので、
エンジニア側でリスクを考慮してNGを出してました。

テープ代の数万円の経費削減の為に、
大物歌手のマスターをお釈迦にしたら、
担当ディレクターの首は免れませんよね。

メーカーの編集キットがあるにしても、
あれだけ薄いテープは強度に不安は拭いきれません。
この際メーカー保証なんてないですよね。

それとデジコピでマスターに戻す際の懸念の問題ですが、
それ以前のパラはアナログスレーブで普通にやってましたから、
デジコピはほぼ音質劣化なしの位置づけでしたよ。
それを問題にしたエンジニアはいませんでした。

実際に劣化を認知できましたか?

もっと言うと、音質劣化よりもテープ編集のリスクが高いと感じます。

3348って、そういう経験値がないんですよね。

メーカーが現場で検証させてたっていうことでしょうか。


「今はスタジオもスタッフもクライアントから信頼されていたんだな
と思いました。」

とありましたが、この際エンジニアはある意味、医者です。

最悪の状況を回避する責務があります。

実際に大事故になっていたかもしれない事象でしたからね。

いや、何かイチャモンつけるつもりで言ってるわけではないです。
いろんな事情があってのことだと察しますが、
もし自分が当事者なら、と考えると怖いと思っただけです。

製作者、演奏者、スタッフの尊い仕事が報われますようにと願うばかりです。

まあ過去の話なので、さほどガタガタ言うことでもないですけどね。

でもこのブログは将来のエンジニアを目指す人にとって、
大変参考になる内容だと感じてます。

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